ルポライター事始
- 作者: 竹中労
- 出版社/メーカー: 筑摩書房
- 発売日: 1999/04
- メディア: 文庫
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戦後、闇市の中から出てきた山師というには品のある人物だ。
吉本隆明、開高健からトップ屋だと軽蔑の目で見られたと記すが、それは話半分にしろ、ルポライターが人様に顔向けできない職業であることは事実であることが分かる。
(表紙にも売文業とはまかり間違えば臭い飯を食うことにもなりかねぬ因果な職業とも書いてあるけど、週刊誌ライターなんて秘密を暴く職業だからな)
しかし、強きを挫き弱きを助けるそういう心が伝わってきて熱い。
没後20年たったそうだが、記録には残らない昔の話が面白いのよ。
山本夏彦が戦争中にも食べ物はあったと書いているのを真に受けていたのだが、会社重役、医者は三食食べれても、一般市民はマジで飢えていた話。
本願寺の床下を仕切った日もささぬ暗い部屋には、二百数十名の住人に風呂一つしかなく、雑居家族の中には胸を病むものが多く、子供たちは栄養失調で痩せこけて、首筋に南京虫の喰い痕が点々と赤い数珠をつないでいた。
住む場所がなくなってお寺に住み着き、愚連隊と化す話(意訳しすぎか?)
利用される弱者。
ルポライター入門で、一番に取材前からプロットを決め、それから構成を考え抜くことを書く。
例がこんなことまで考えて作っていたのかよ。
私のように気の向くままではない、プロのプロたる所以にがびょーんとくる。
週刊誌ライターもしていたとかで、昔の週刊誌の気骨具合が語られるに、私は今のヘラリンコ、部数減の雑誌斜陽の世界しか知らなかったので、語られるジャーナリストの世界は、確かに流行った黄金期があったことが伝わってきた。
当時からさらに進んで、弱い者いじめが日常の世界になっちゃったんだもんな。
さりげない強気の挫き方ってこんなことを読み取るのか、新鮮であった。
コードに触れそうなことも書かれていて、出版社の筑摩書房もグッジョブで、評価を3ぐらい上げる。