増税は誰のためか
増税の何が問題か。
あちこちで語られる断片が一つのタペストリーで語られる納得感があった。
丸激の有料メール会員になっても面白そうかと、ちらと思った。
まずは高橋洋一。
神保 けれど日本は、医療も教育も無料の北欧には及ばないにしても、アメリカ寄りは充実した社会保障が完備されているのに、5%しかとっていない。
これでは財源が足りなくなるのが当たり前と言うような議論です。(略)
しかし、この問題については、高橋洋一さんの説明がストンと腑に落ちました。
公的な社会保障サービスを実際に提供している主体はほとんどの場合地方自治体なのだから、地方自治体がサービスのレベルに応じてそれぞれ独自の消費税を決めるのなら、負担と給付の関係が明確になるが、日本の消費税はもともと5%のうち4%は中央政府が取っている。
創刊ゲルと日本の消費税5%というのは、日本における地方自治分権の進み具合を念頭におけば、まあ妥当なところじゃないのか、と言うのが高橋さんの話でした。
高橋 所得税や法人税と比べて、消費税は景気に左右されにくい安定財源だから、地方の基礎的な行政サービスをまかなうには非常に適しているわけです。(略)
ゴミだって景気が悪くても集めなきゃいけないわけでしょう。だから、消費税は地方にあげちゃって基礎的サービスに使う、というのが普通です。
高橋 借金(財政赤字)があるから増税すると言いますが、借金の返しかたには、フローで返すやり方と、今までのストックで売って返すやり方の2つがあります。
会社が傾いたら不要な資産(ストック)を売るというのが当たり前。
このストックが、宮台さんのおっしゃった独立行政法人などの官僚の天下り先なわけですよ。(略)
現に日本の政府資産は647兆円と、世界一たくさんあるんですよ。(略)
神保 政府資産を圧縮すると、どのくらいお金が捻出できますか?
高橋 200兆円ぐらい出てきます。(略)
消費税5%アップで増える税収は約12兆円だから、約100兆円あれば7〜8年は増税する必要がない、と言う話になります。
高橋 ところが、両者で把握している法人数に差があるのです。アバウトにいうと、国税庁は約280万件を把握していて、年金機構は約200万件(略)
これは論理的に考えるとおかしい。
なぜなら社会保険料は赤字企業もみんな払うわけです。国税庁は、極論すれば黒字企業だけを把握していればいいわけです。(略)
従業員からすると、自分は天引きされたのに、会社が年金保険料を払っていないということですよ。(略)
それで、この「消えた保険料」を普通に計算すると、年金と医療保険を合わせて最大12兆円になります。(略)
これは新たに「歳入庁」を作って、税金と保険料を徴収を一緒にすれば解決する問題なんです。(略)
神保 そのためには「国民番号制の導入」が必要なわけですね。
神保 高橋さんの計算では、「消えた保険料の徴収」「納税者番号」「歳入庁」「インボイス」と言う4つの制度改革だけで、毎年18兆円の増収が見込めると。
高橋 いま歳出は100兆円近いですが、10兆円くらいなら簡単に削れますね。(略)
ただ、今の民主党政権は、自民党のときより歳出額が12〜13兆円多いわけです。
それを元に戻して、80兆円にして、できればさらに10兆円減らす、という感じでしょう。
高橋 メディアも政治家も、「国債の日銀引き受は禁じ手だ」と言うのですが、実は毎年やっていて予算書にも書いてあることなんです。(略)
もちろん2011年度予算でも約30兆円分の引受枠があります。
で、神野直彦さん
もし、大きな政府にするのであればスウェーデン的な逆進的な負担構造にして、「貧しい人も税負担をしてください。そのかわり最低限度の生活は保障しますよ」というべきです。
逆に、アメリカ的な社会ビジョンを持つのなら、消費税ではなくて所得税のウエイトを上げるべきです。
つまり、「どういう社会をつくるのか」と、「税をだれが負担してどう分かち合っていくのか]はリンクしなけばならないのです。
ところが、日本はこれが離れてしまっている。(略)
いま起こっている議論は、ヨーロッパでは消費税率が高いから日本も上げようだとか、法人税は国際的に高いだのなんだのと言う、国際比較しかしていません。
宮台 なぜ我々は、所得階層別の負担構造を俯瞰できるようなデータを見ることができないんでしょうか。
神野 負担構造のデータを作るのがなかなか難しくて、かつ、元になるデータが公開されていないのが大きいと思います。(略)
徴税する側も、所得いくらの人が、税金をどれだけ払ったかを、把握できない。納税者番号制が導入されていないので、それぞれの納税者の所得も完全につかめないわけです。
面白かったところに付箋を貼っていったら21か所にもなってしまった。
だけど、よく分からないことに、説得されるんじゃないぞ、自分。