天地明察
そうまでして改歴の名誉が欲しいのか。そういう声が全国から聞こえてきた。
「うん……欲しいな」
闇の中で春海は呟いた。
建部と伊藤に誉めて欲しかった。酒井に天に触れたと告げたかった。
死との争いのの戦国を廃し、武家の文化を作りたいと願った保科正之の期待に応えたかった。
闇斉の、島田の、安藤の、改暦事業を立ち上げた仲間達の悲願を叶えたかったし、亡き妻に胸を張って報告したかった。
ちょっと読み返したつもりで、上の文章を読んだら、涙がじわっとにじんでしまった。
私の感情移入ゾーンにストライク!
私は有象無象であり、それはしゃーないことである。
けど、誰かに頼ってもらい気持ちかな、だれかに認められていたいというのかな。そういう気持ちがないわけでもない。
まだ若いし。
[日々の徒然]
映画「アマデウス」を見て凹む。
好きで文章を書いていて、意味ないよねとゆーのは分かっているのであるが、真正面から問い詰められると痛い。
誰にも顧みられないところで充実感を持つのも修行がいる。
(http://d.hatena.ne.jp/akizu/20110110/p1って感じ)
で、この話は直球ど真ん中なのだ。
主人公は、ちょっと訳ありだが、碁打ちの名家で、周囲に認められる才能がある。
退屈を覚えていると、上に認められて、職転する。
やりがいのある仕事、だんだんその重要性がわかってきて・・・
自分の仕事が武家の文化を体現し、イデオロギーの転換の象徴となるんだべ。
やるべき指針を見出す男のシンデレラストーリーだと思う。
多少の山谷もすべて人生の糧にできる、なんとゆーか、歪まない、まっすぐ具合がまぶい。
もちろん、売りはそういう構造だけじゃなくて、雰囲気に厚みがあって、稀なレベルの感情移入のしやすさがある。
良質のエンターテインメントであった。
- 作者: 冲方丁
- 出版社/メーカー: 角川書店(角川グループパブリッシング)
- 発売日: 2009/12/01
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