痛快!憲法学

そもそも人権というのは、万人に平等に与えられるもの。人間でありさえすれば、誰にでも無条件に与えられるというのが人権の概念です。然るに、「少年の人権」とは誤用もはなはだしい。子どもだけに認められ、大人には認められない権利があるとしたら、それは子どもの「人権」とは言いません。それは子どもの「特権」です。

日本国憲法は生きているのか死んでいるのか→憲法とは成文法ではなく、本質的には慣習法である、と説き、憲法が死んでいたドイツ・アメリカの例を報告。

刑法とは誰のために書かれた法律か→裁判官を縛るための法律

そのほか民主主義と憲法と選挙が全く関係のないことを説いたりして、非常にスリリング。

ところで、私がこの本を読んだのは大学一年の夏でした。(大学の図書館にこんなもの置いておくなよ)

私はこの本を読んで興奮して、3日間ぐらい雲の上を歩いているような気分になりました。

人間というものは不思議なもので、たとえそれが矛盾したものであったとしても、慣れてしまえば、どういう不都合なものでも、それを“当たり前の前提”として引き受ける。(省略)「自分たちはそれに慣れているからいいかもしれないけど、それをこれから改めて“前提”として引き受けられないオレ達にとって、そんな前提は矛盾以外のなにものでもない」と思ってしまった人間には、そんな矛盾は引き受けられない。

とは「ぼくらの最終戦争」の橋本治の言葉です。

その当時、自分は世の中が曖昧模糊としたものでしかなく、矛盾という言葉も私の辞書にはありませんでした。(橋本の本を読むのはこの本を読んで1年後の話)

その一方で、世の中には公の論理があり、それ以外の論理はどこか破綻していると、漠然と思っていました。

でも、この「痛快!憲法学」を読んで、これまでの常識は反することばかり書いてあるのに説得力があるのに、びっくりしました。

この世の法則は例外だらけですが、小室先生はこの世のすべては体系だって理解しているのではないかと、思いました。

そうなりゃ宗教ですが、矛盾がない状態というのを考えたのはこの本が最初です。

また、自分独自の考えを「分かりやすく」人に話すことができ、人を説得することができる、という可能性を知ることができたのもこの本があったからこそです。

これだけ言うことがぶっ飛んでいる人が日本に住んでいるなんて、心が和みます。

機会があって、父にこの本買ってとねだったら、表紙が怪しいからだめと言われてしまいましたw

そんな本ですし、小室の言うことの正誤はともかく、読めば何かしら思うところのある本だと思います。

「日本人のための憲法原論」と題名を変えて出版されています。

痛快!憲法学 小室直樹 集英社 2001