本、そして人
- 作者: 神谷美恵子,中井久夫
- 出版社/メーカー: みすず書房
- 発売日: 2005/07/09
- メディア: 単行本
- 購入: 1人 クリック: 2回
- この商品を含むブログ (21件) を見る
またまた最近セミナーに出ていて、うちの社の世話になっていない農家と会う。
うちの社は結構ネットワークが凄いので、そんなことで困っているのなら、聞いたらヒントぐらいは出るとは思うんだが。
十二国記「図南の翼」で自分で何でも試してみないと気のすまない人が出てきた。
オレ、その手の人の心中としては違うような気もしているのだが、それはともかく、
その心中はうかがい知れない。
梅原大吾さんだったか、定石をモノにするには、自分で試行錯誤しなければ本当に使いこなせることにならない→結果がギネス認定の世界一長く座についているプロゲーマー
で、試行錯誤は大切なんだなーとは思ったのだが、食い扶持3年分しかない状況で試行錯誤もまずいだろう。
(農業は年1作が多いから3回しか試せない)
新規就農者で2年はマニュアルに従って栽培すると言っていた人がいたが、農地のくせ(排水性、遮光性、土の組成)を読みこなすのは上級者で、初心者はとりあえず平均収量を採れるようになるまで人真似から入ったほうが、試行錯誤では頂点か最底辺にしかなれない気が、と話がずれた。
でも私はその独自でやっている人はそれはそれでしょうがないと思う。
自分で決める人生だから価値があるのだ。
助けるためにいつでも手は伸びることを知ってもらえさえしたら。
(俺らの役目は助けを求められたら、助けに応えられるだけの自力をつけることなのだが、
大の大人ができないことをピッかと答えを出すのも難しいわけで、できていたら後継者がザンザカできているはず、で辛い仕事だ)
この「本、そして人」で新渡戸稲造の話が出てくる。
新渡戸稲造で最も優れていたのは人格だと、幼いころは感情を抑えることができなかったが、修練したそうだ。
新渡戸先生は、人に褒められたくて人格矯正したわけではあるまい。
結局適性があったからとは言いたくなくて、内心の苦しみがあったとして、そんな人生にどうやって納得していたのだろう。
酒を断つことをやめられない人と比べてしまう。自制する苦しさと自制できない苦しさではどこが違うのだろう。
マルクス・アウレーリウスの自省録の解説で神谷さんは、マルクスの準拠するストア派は不幸や誘惑に対する抵抗力を養うにはいいが、新しい生命を湧きあがらせるていのものではない、
自省録は、あくまで人間らしい心情と弱点をそなえた人間が、その感じ易さ、傷つき易さのゆえになお一層切実にたえず新たに「不動心」に救いを求めて前進して行く、その赤裸々な、いきいきとした記録で、と、
私は余計なことを考えずに、目の前のことを受け入れて、粛々とできることをしたらいいというのは分かっていて、
「こころの旅」で老人のありさまが書かれていて、今からそういう生き方ができたらなと思うのであるが、まだアラサーでそこまで悟るのは辛すぎる。
こういう心の在り方って、早めに年を取るのは結構不幸っぽいようにも感じているのだが、
新渡戸稲造は無理でも自省録は1カ月以内に読みたいかな。
神谷さんはデーモンと呼ぶものを持っていたのか。これまで読んだ3冊では触れられていないが、これはいっちょ「遍歴」に進むしかないか。