陋巷に在り10〜13
- 作者: 酒見賢一
- 出版社/メーカー: 新潮社
- 発売日: 2004/11/28
- メディア: 文庫
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最近、あまり小説は読んでいない。
何か自分の知らない世界を覗くには、ノンフィクションのほうが得るものがある気がする。
アルスラーン戦記も読んだのが10年前で中身を忘れてしまっている。
新装版が出たのをきっかけに買い直そうかとも思ったが、読みだすと止まらなくなるのは分かっていても、
人生で読み直すと止まらない経験を何度したかというと、かなーりたくさんしてきた気もするし、気が乗らない。
で、この「陋巷に在り」は読み出したら止まらない系統である。
人生で何度も経験してきたようで、先が読めない。
主人公の顔回が早世することは分かっていて、悲劇へまっしぐら、のようで、全然死ぬ気がしないようで、ピンチの連続である。
顔回や孔子は、礼という呪術使いで、その理は、今まで読んできた魔法が出てくる小説の根本をズバリと言い当てた感じである。
饕餮が出てくるところなんか、饕餮って強さの指標となって、返って弱っちく見せられたりするものなのだが、この饕餮は神の威厳をまとったままである。
神の思考の読めなさ具合が心地よい。
一方で人の心はこう動くものなのかと、よくまとめられている。
私の白眉はガンボクが死んだ2巻、女に惚れるってことはこういうことか、こんなに説得力があるのは読んだことがない。
だいたい女の良さってのは、小説中の主人公が惚れていても、自分が見てどういいのかわからなかったりするし。
私は最終巻の最後の行で、これで終わりかっと叫んだ口である。
未完成とは言いつつ大器で安心していられる顔回より、ヨはどうなるんだっ
後20年経ったら、作者は続きを書いてくれないかな、と希望する。
読み出したら止まらない、は人生で何度も経験したと言いつつ、小学生の時と比べて、30も超えると乗り切れないことも多い。
しかし、この小説は、キャラ小説的に人が立っていてあっさりパカパカ人が死んで諸行無常が通低音で、明るすぎる小説より、人生の先が見えてきた身としては感情移入しやすい。
人物鑑定、人の性格パターン的に勉強になることも多く、私はまだまだ青ちゃんだな、ということを思い知らされた。