日本農業への正しい絶望法

日本農業への正しい絶望法 (新潮新書)

日本農業への正しい絶望法 (新潮新書)

日本の農地行政は崩壊しているということは、6年前の著作で読んでいたが、6年後の現在、もう日本農業に先がない感じに書かれている。

OECDの推計によると日本の農業保護額は4.6兆円で日本農業の付加価値額の3.0兆円を上回り、計算上は農業生産をゼロにしたほうが国民所得が増えると、第1章でパンチを食らう。

現場を外国人研修生が支えていることは結構知られていることだと思うが、日本人だと、そもそもその肉体労働に耐え切れず逃げ出すからだ、とか、

農業をマニュアル化して大規模化することも出来るが、その規模は外国が日本の100倍以上(だったかな。出典私)広い畑を持っていて、企業が農業に参入するとすればマニュアル化農業だが、日本の規模だと外国相手に競争にならないとか。

その辺の有機農業は技能が全然足りていない。能書きだけでおいしくない。

米について、「まともな有機栽培」、「名ばかり有機栽培」、「慣行栽培」の3つのそれぞれの白米をコップに入れて水を注ぎ、ラップで蓋をし、そのラップに針で少しだけ通気口を開けて腐るまで放っておくと、「名ばかり有機栽培」「慣行栽培」「まともな有機栽培」の順で腐敗が遅くなるそうだ。

日本の農業は、まともな有機栽培を目指したほうがいいけど、先行きは暗い。

明るい情報が全くない。


他に欧米の自然環境では連作障害の恐れなどで休耕したりしないと自然環境が保てないのに対し、日本では里山のように手を加えないと自然観環境が保持されないとか、

95年発効のWTO協定では先進国に農業補助金の削減を義務づけたんだが、バイオエタノールは抜け穴で、米国ではバイオエタノール1ガロン当たり2ドル程度なのに、1ガロン当たり50セントを超す補助金を支給して、2007年、2008年の穀物価格上昇の75%がバイオエタノールの増産に起因するとガーディアンが指摘したとか、小ネタも勉強になったが、ちょっと憂鬱になる本であった。

ちょっとK名人は小祝さんかとも思ったが、あそこ本拠は長野だしな、別人か。