商業経営の精神と技術
- 作者: 渥美俊一
- 出版社/メーカー: 商業界
- 発売日: 2012/05/22
- メディア: 単行本(ソフトカバー)
- この商品を含むブログを見る
第1章、2章は積読行きレベルだったが、それ以後、具体的に店舗経営の基本が語りだされてからは、これを真に受けるべきか迷うが、ともかく、一つの指針が示される爽快感があった。
資金調達の方法は、普通は以上の4通りしかない。(略)そして一番影響力の大きいのは回転資金差であり、続いて借入金である。
3番目の資金調達の方法は、利益蓄積である。(略)4つ目の資金調達の方法は、払い込み資本金である。
もう一つ重要な回転率の尺度は、「販売資産回転率」と「支払勘定回転率」の差にある。(略)
「何回転」という数字を使えば、販売資産回転率は支払勘定回転率の3倍は必要となる。(略)
支払いが遅ければ遅いほど、この数字が大きくなる。数字が大きくなればなるほど、金利がかからず、コストもかからず、しかも自由に使える回転さ史さんが膨大に生まれてくるのである。
厳密な計算方法ではないが、どのくらいの資金が浮くかというと
一日当たりの現金売上高×(年間支払勘定回転日数ー年間販売資産回転日数)
という計算で出てくる金額が、回転差資金に近似する。
たとえば商品回転率が15回転で、販売資産回転率が13回転とすると、販売資産回転日数は、
365日÷13≒28日
となる。これに対して支払勘定回転率が6回転ならば、その回転日数は、
365日÷6≒61日
年間売上原価が7.5億円、年間10億円売っている店ならば、
(75000万円÷365)×(61‐28)≒6780万円(年)
この6780万円は、売り場拡張や新店のために使えば金利もいらないし、どこからも文句は言われないのである。この回転差資金は税金の対象にもならない。
労働分配率とは、荒利益中の人件費の割合である。
この数字は38〜40%の間が望ましい。成長対策としてスカウトや中途採用を活発に行ったときは、最大42%にまでなる。(略)
ある企業は45%を超えて破局的な状況になっている。他の小規模企業では30%を割っている。
その他、日本の店ではディスプレイに5000ルクスを超えるときもあり、そうなると、一方が明るすぎて下の棚が見えにくくなっていしまう。アメリカでは上の棚でも500ルクス以下、とか、ベンダーのカモではなく、ベンダーが育ててみたいと肩入れする店にするには、とか。
商品の在庫の値段帯と量はどの関係性が良いか、放っておくと移動するぞ、みたいなのも面白かった。
本の知識は本の知識だが、それはそれとしてこのレベルの本を30冊も読めたら、たぶん見える景色が変わると思う的に勉強になった。