商業経営の精神と技術

新版 商業経営の精神と技術

新版 商業経営の精神と技術

第1章、2章は積読行きレベルだったが、それ以後、具体的に店舗経営の基本が語りだされてからは、これを真に受けるべきか迷うが、ともかく、一つの指針が示される爽快感があった。

資金調達の方法は、普通は以上の4通りしかない。(略)そして一番影響力の大きいのは回転資金差であり、続いて借入金である。

3番目の資金調達の方法は、利益蓄積である。(略)4つ目の資金調達の方法は、払い込み資本金である。

もう一つ重要な回転率の尺度は、「販売資産回転率」と「支払勘定回転率」の差にある。(略)

「何回転」という数字を使えば、販売資産回転率は支払勘定回転率の3倍は必要となる。(略)

支払いが遅ければ遅いほど、この数字が大きくなる。数字が大きくなればなるほど、金利がかからず、コストもかからず、しかも自由に使える回転さ史さんが膨大に生まれてくるのである。

厳密な計算方法ではないが、どのくらいの資金が浮くかというと

一日当たりの現金売上高×(年間支払勘定回転日数ー年間販売資産回転日数)

という計算で出てくる金額が、回転差資金に近似する。

たとえば商品回転率が15回転で、販売資産回転率が13回転とすると、販売資産回転日数は、

 365日÷13≒28日

となる。これに対して支払勘定回転率が6回転ならば、その回転日数は、

 365日÷6≒61日

年間売上原価が7.5億円、年間10億円売っている店ならば、

(75000万円÷365)×(61‐28)≒6780万円(年)

この6780万円は、売り場拡張や新店のために使えば金利もいらないし、どこからも文句は言われないのである。この回転差資金は税金の対象にもならない。

労働分配率とは、荒利益中の人件費の割合である。

この数字は38〜40%の間が望ましい。成長対策としてスカウトや中途採用を活発に行ったときは、最大42%にまでなる。(略)

ある企業は45%を超えて破局的な状況になっている。他の小規模企業では30%を割っている。

その他、日本の店ではディスプレイに5000ルクスを超えるときもあり、そうなると、一方が明るすぎて下の棚が見えにくくなっていしまう。アメリカでは上の棚でも500ルクス以下、とか、ベンダーのカモではなく、ベンダーが育ててみたいと肩入れする店にするには、とか。

商品の在庫の値段帯と量はどの関係性が良いか、放っておくと移動するぞ、みたいなのも面白かった。


本の知識は本の知識だが、それはそれとしてこのレベルの本を30冊も読めたら、たぶん見える景色が変わると思う的に勉強になった。