生活保護の謎

のっけから、親兄弟なら援助するのが当たり前、と書かれ、この本は偏っているという前提で読まなければいけない雰囲気をひしひしと感じるが、中身はそれなりに勉強になった。

著者は大蔵省に勤めていたとかで、一応専門かもしれない。

生活保護は水際とか硫黄島作戦とかで、申請書を渡さない可能性はあるが、それは職員が悪いのであって、職員との会話は録音、記録し、申請させてくれないのであらば、市長あてに内容証明郵便を出すとなれば、また態度が違ってくる。

ケースワーカーもお役人だから、強いものには弱く、弱い者には強くなる。

生活保護受給に詳しい人を連れていけばOK。申請書を渡さなければ、役人が罰せられるので、筋を知っている人にかかれば、簡単に受給させてもらえる、そうだ。

受給条件は4つあるが、月12万円以下の収入ならば生活保護を受けさせてくれる、、、うちの県の求人を見ていると、当てはまる人が多そうである。


日本の生活保護制度は、受給するまでの敷居が非常に高い割には、受給が開始された後のフォローは十分でない。

ケースワーカーは、一人当たり80件以上の生活保護受給者を担当していて、事務処理だけで忙殺されている。

ケースワーカーがもっと増えれば、就職など受給者の指導も行き届くし、生活を立て直せる人も増えるだろう。不正受給も減らせるはずである。

日本の行政は、大事な部分で予算をケチるので、かえって高くつくというケースが実に多い。


実はフランスの国家予算の社会保障の割合は12.3%、ドイツ16.2%、イギリス11%、アメリカ4.6%、日本4%で、日本は諸外国と比べて福祉に手厚くない。

アメリカの寄付は年間20兆円規模だし、そこは割り増して考えないといけないし。

フランスでは全世帯の23%が国から住宅の補助を受けていて、イギリスでも18%が住宅補助を受けていて、アメリカでも住宅政策に毎年3兆円程度が使われている。

日本で公営住宅に入れる基準は月収15万8千円以下で子育て世代はまず入れない。抽選倍率は9.9倍。

その他、フードスタンプの有効性をはっきり書いた本は、私が勉強不足のせいでこの本が初めてであった。


非正規になると正社員とこれほど格差があるのは日本だけで、日本政府は国民の生活が第一なんて考えてないよなとちょっと憂鬱になった。

誰のための国なのか、という疑問が浮かんでくる本だった。

生活保護の謎(祥伝社新書286)

生活保護の謎(祥伝社新書286)