認知症の人々が創造する世界

認知症の人々が創造する世界 (岩波現代文庫)

認知症の人々が創造する世界 (岩波現代文庫)

病院の中で、廊下を部屋を住んでいた街だと認識する。

結婚していないのに、赤の他人を夫と思いこむ。

結婚していたのに、赤の他人を夫と思いこむ。

よその人を夫と思いこむ女を、自分の妻だと思い込む男。

もめごとが起こりそうな状況だが、不思議といさかいは起こらない。

認知症の人々は、それ以上関係を突っ込んだら、思い込みが打ち壊されることが分かっている?


夢の中で私は夢の中のルールを知り、それに従う。

起きた時、そんなことはありえないと思うが、夢の中では当然のことをしていると思っている。

呆けたら、呆けた世界のルールに従い、疑問を挟む余地はあるのか、ないのか。

少し恥ずかしい気はするが、この本を読むと、各機能はだんだん衰えていったとしても、本人は真剣だし、幸せであるかもしれないと思った。

外からワイワイ言われなければ←このファクターって結構大きいよね


ちなみに、会話を続ける能力を失っても、顔を覗き込んだりして何とか人と接触をとろうとするおばあちゃんとかちょっと切ない。


それから、結婚しているのに、別の人を夫だと思っている女の人は、その夫から背を向けて座っている。

耳をそばだて、夫の行動を把握しているが、決して夫のことを快く思う一方でもない。

結婚って幸せいっぱいなだけなものでもないらしいし、何を忘れても幸せになれるわけでもないところはやっぱり人生って難しいのねって感じである。

呆けようが呆けまいが、人生は甘い一面を見せるときもあれば、そうでないところもある。

でもそれが私の、わたしだけの人生なんだなっと。

出来るだけ、甘めにお願いしたいものですが。