マイノリティの拳 世界チャンピオンの光と闇

マイノリティーの拳

マイノリティーの拳

日本に住んでいて、自分の境遇が不満なんて、なんて贅沢。

別に努力しないと這い上がれないというつもりはない。

働けば月14万円くらいは稼げるし←かつて家賃を除き月8万で生活していた。趣味が読書は安上がり

とかって、最近はワーキングプアという言葉もあるけど、それでも、その言葉の本場、文明国アメリカの事情はかなりひどい。

(この本でプエルトリコ事情を初めて知った。

ロミオとジュリエットのリメイク版で地名は知ってたけど。

カリブ海の島で「アメリカ合衆国自由連合州」として国家の一つとして認められることも、州の一つにカウントされることもない。

プエルトリカンは合衆国の市民権を得てはいるが、50州に移住しない限り大統領選に投ずる選挙権は持たされない。

つまり500年以上も他民族に支配されている。53%が貧困層にくくられる。

よく見れば今日の新聞に、今アメリカの51番目の州になるかが俎上に載せられているらしいと記事があった)

貧しい人々が住むのは、映画の中の話ではなく、マジでギャングが行きかう世界で、そこから這い上がるすべを考えることさえできない。

食べるために麻薬の密売人になるしかない。

たまたまボクシングに出合い、そこから這い上がる術であるスポーツに巡り合ったのが、この本の黒人の主人公たちである。

しかし、世界チャンピオンになったとして、犯罪に巻き込まれない程度の豊かさ、チャンピオンベルトは売り払い、3部屋に裸電球一つの生活から抜け出せない。

食べるために、勝てなくなっても、ボクシングをやめることができない。

かといって、生活に追われて十分な練習時間をとることもできない。

もちろん、貧しい暮らしから抜け出せた人もいるが、栄光の影に。


マイク・タイソンの悲しさとかロッキー6が作られるきっかけ、伝道師ジョージ・フォアマン(貧しい子供のカウンセリングセンター、スポーツ機能付き、の維持のためにボクシングにカムバック、42歳になって統一ヘビー級チャンピオンに挑み、一歩も引けを取らなかった)の話は文学的であった。

どんな状況になっても前に進み続けるしか、道はない。その苦しさに立ち向かえないとしても、さらなる苦しみに襲われることなんかなければいいのに。