マイノリティの拳 世界チャンピオンの光と闇
- 作者: 林壮一
- 出版社/メーカー: 新潮社
- 発売日: 2006/09/14
- メディア: 単行本
- 購入: 3人 クリック: 12回
- この商品を含むブログ (17件) を見る
日本に住んでいて、自分の境遇が不満なんて、なんて贅沢。
別に努力しないと這い上がれないというつもりはない。
働けば月14万円くらいは稼げるし←かつて家賃を除き月8万で生活していた。趣味が読書は安上がり
とかって、最近はワーキングプアという言葉もあるけど、それでも、その言葉の本場、文明国アメリカの事情はかなりひどい。
(この本でプエルトリコ事情を初めて知った。
ロミオとジュリエットのリメイク版で地名は知ってたけど。
カリブ海の島で「アメリカ合衆国自由連合州」として国家の一つとして認められることも、州の一つにカウントされることもない。
プエルトリカンは合衆国の市民権を得てはいるが、50州に移住しない限り大統領選に投ずる選挙権は持たされない。
つまり500年以上も他民族に支配されている。53%が貧困層にくくられる。
よく見れば今日の新聞に、今アメリカの51番目の州になるかが俎上に載せられているらしいと記事があった)
貧しい人々が住むのは、映画の中の話ではなく、マジでギャングが行きかう世界で、そこから這い上がるすべを考えることさえできない。
食べるために麻薬の密売人になるしかない。
たまたまボクシングに出合い、そこから這い上がる術であるスポーツに巡り合ったのが、この本の黒人の主人公たちである。
しかし、世界チャンピオンになったとして、犯罪に巻き込まれない程度の豊かさ、チャンピオンベルトは売り払い、3部屋に裸電球一つの生活から抜け出せない。
食べるために、勝てなくなっても、ボクシングをやめることができない。
かといって、生活に追われて十分な練習時間をとることもできない。
もちろん、貧しい暮らしから抜け出せた人もいるが、栄光の影に。
マイク・タイソンの悲しさとかロッキー6が作られるきっかけ、伝道師ジョージ・フォアマン(貧しい子供のカウンセリングセンター、スポーツ機能付き、の維持のためにボクシングにカムバック、42歳になって統一ヘビー級チャンピオンに挑み、一歩も引けを取らなかった)の話は文学的であった。
どんな状況になっても前に進み続けるしか、道はない。その苦しさに立ち向かえないとしても、さらなる苦しみに襲われることなんかなければいいのに。