陋巷に在り 3
子蓉がどのような表情でそう言ったのかわからなかった。
ただ残酷の色はおそらく表れていまいと思った。
おそらく最初に媚を放った時のやさしい顔なのであろうと思った。
女のどこがいいのか、全く分からなかったが、この本を読んで開眼した。
これは堕ちる。
女が書けていない、うんぬんはよく言われるが、この本の女のきまぐれで肉感的で魅力的なのに絶句した。
峰不二子の魅力が全く謎だったが、この本を読んだ後に不二子ちゃんを見ると、また違った面を照射できる、かも。
また、男にとって女とは何かについて考えさせられた。
この巻のハイライトは、敵の妖婦vs顔回、そして妖婦vs顔ボクである。
vs顔回では若者の情熱的なエロに当てられる。
顔回、まさかで引っかかる。
もちろん最後まで行かずに顔回は何とか持ち上がるが、エロいよ、エロい。
これはいい、と思ったが序の口であった。
前巻(http://d.hatena.ne.jp/akizu/20110423/p2)で仕事一筋、皆の尊敬を集める顔ボクが完全敗北して殺されるのである。
仕事人間の顔ボクはかつて一度だけ自分がせむしの小人であることを人に愚痴ったことがある。
そこで、受けた反論がですね、「死にたい」という人を止めるには、「私が嫌だから止めてくれ」、じゃないけど、建前で終わりがちな正論を本気で言った迫力ある言葉選びで、これは惚れる。
相手はもちろん女だ。
情熱的に結ばれたはずなのに、娘は突然駆け落ち同然に村を出て行った、、、
その娘と同じことを妖婦が言うのである。
何故、わしの思い出にまで及んで踏みつけにする……
女とはなんと摩訶不思議なものである、みたいなのが丸ごと提出されて、仕事人間の顔ボクが「あの娘がいたら他に何がなくとも満足だっただろう」的に言いながら死んでいくのである。
死に際に今までの人生全否定かよ。重すぎである。
男にとって、女とは何か。
こんな女なら殺されても、うたかたの夢としてはよし。
自分もちょっと婚活をまじめにしてみようかな、と思ったのであった。
サーカスという30代男向けの雑誌の結婚特集を読めば、男の妻が嫌な話ばかり(そういえば離婚したいとは書いていなかったが)。
「これから結婚するつもりですが何か」という本を読めば、離婚したい妻の話がズラズラであるものの。
- 作者: 酒見賢一
- 出版社/メーカー: 新潮社
- 発売日: 1998/04/24
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