娘に語る祖国

先日亡くなった在日韓国人のつかこうへいが語る国とは何か?

およそ人の子として生まれたものが、この世でなしてはならないことが、一つだけあります。

それは、親より先に死んではいけないということです。

なんか臭いことを言っているが、全然滑っていない。

じ〜んと洒脱だけれど深みのある文章の中に置かれ、まず、ハートをつかまれる。

パパがママと結婚したわけは、ママの一途にパパを思う汚れのない瞳の中に、「祖国」を見たからです。

そうです、みな子よ、あのつらい戦争はパパとママを出会わせ、お前という明るい子を産ませるためにあったのです。

この文章も滑らずに説得力がある。

常人ならうわっ滑りになるけど、それまでの悩み、軽く書かれているけど、重みのあるディディール(娘の戸籍を届けるまでに韓国籍にするか日本国籍にするかで生まれてから14日悩んだ、とか)が読み飛ばしを許さない。

後半は韓国で舞台を上演していく経緯が心の変化とともに語られるが、前半のほうが好きかな。

この文章の深みはちょっと私では伝えられない。

ってゆーか、橋本治「89’」的、新しい主張をするときは少し同情を引いたほうが通りやすいセオリーを私は信じているのだが、著者の日本人を悪く言いすぎないところが本音であってもらいたいと思った。

こういう本音を身につけなければいけない人生も辛いだろうが。