タイの永住日本人

タイの永住日本人

タイの永住日本人

第二に、「永住外国人」の多くは、戦前から戦後にかけて大変な苦労をした方が多い。

それらの苦労に満ちた生活を、少なくとも一つの社会史の記録として残しておかねばならない。

とりわけ、老齢の方が増えつつある今の時期を逃すと、調査が不可能になる。

第一章は、戦後、タイの日本人社会の中に「永住日本人」と呼ぶことのできる層が生まれた経過をたどる。

そして、日本の経済進出による大量の「駐在員」の存在との関係を浮き彫りにしながら、その特徴を追い求める。

アンケート結果をまとめたりして、学術よりの本である。

ただし、個人的なインタヴューもいくつか載せてあり、硬すぎはしないし、そもそも、アンケート結果も簡にして要なので、読みづらいということはない。

タイに永住することを決めた軍人の足取りはあまりたどれていない。

老後は日本で、と考える人がいたり、日本に帰りたいが身寄りもなく、しかし、タイで老後を過ごすにもお金がない人の問題が顕在化する直前の調査である。

20年前の話で、それらの人が調査後どうなったのか、日本政府は何もしていないだろうなと思ってちょっと暗くなった。