歴史はグルメ
亡くなったチャップリンは映像の中で、最も優美に、マナー正しく、かつウマそうにものを食べる演技者であった、と私は思う。
○なんということもなさそうだが、出だしでハートをつかまれる、
「ライムライト」の中でチャップリンはものを食べるようだが、実はしぐさだけで、一ひれも口に入れていない。
食べ物を口に含みながらの演技はどんな名優でも困難というより不可能ではないだろうか。
ちなみに壮年時代のチャップリン邸でのお気に入りのコックは英語はひとこともしゃべれない、ジョージと呼ばれる日本人だった。
ををを。薀蓄本として合格である。
○私達日本人は定型された食事様式を持っていない。
「日本人の食事様式」(児島定子)に書かれてある幕末、パークスを接待した食事様式は、鶏スープ、魚、牛ひれ、ローストビーフ、トリュフ(!)入りパイつぐみワイン煮、マッシュルーム・パイ包み、アスパラガス、冷製ババロア、キュリュシュ・ゼリー・アーモンド菓子,マスカットブドウ、干しスモモ、ボンボン、クリームかけメレンゲ、アイスクリームなど(一部抜粋だけで)と豪華な一方で、
福沢諭吉、渋沢栄一、大隈重信、西郷隆盛といった明治の著名人が無名の青年だった頃はひでぇ。
「この点ではまさに当時の日本は、二つの臣民が住む一民族、というほかなかろう」
日本人が開国からぱったと日本料理を捨て、西洋料理が「口にあって」しまったのは謎である。
指摘されて、確かに肉料理はおいしいけど、習慣にもとづく食事が簡単に変わってしまったのは不思議だ、と思った。
歴史はグルメ 荻昌弘 中公文庫 昭和61年
- 作者: 荻昌弘
- 出版社/メーカー: 中央公論社
- 発売日: 1986/06
- メディア: 文庫
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