失踪HOLIDAY

この本に収められているのは中・短編が2編だが、主人公の性格付けを最初にがちっとして、これからする普通ではない行動を抵抗感なくと受け入れさせ、と、同時に、伏線を見落とせさせる。

違和感が性格の一部としてするっと受け入れられ、主人公が本当にいそうな人に思わせられる。

といいつつ、その主人公の思い込みの根拠のなさにヒヤッとして、物語が急転直下悪いほうに転がる予感が離れない。

それがまた物語の吸引力になっている。

そこは信頼する所じゃないだろう、ひやひやします。

この人はホラーを書いたらうまいだろうと思います。

書かれていることとしては、ありきたりなのに、書かれていないところで想像力をかきたてられる二重構造がある。

失踪HOLIDAY 乙一 角川スニーカー文庫 平成17年