384,403km あなたを月にさらったら

エロ文庫、ティアラ文庫です。

ティアラ文庫は3冊目です。3冊読んで、エロで抜けないのは仕様か、とゆ〜感じです。

でも、フランス文庫と比べて悪かった。3冊読んで、ティアラ文庫にはティアラ文庫の目指すところがあるのかも。それは心地よいものです。

いくら酔っ払っていても相手の嫌がることはしていない自信がある、みたいな。

森奈津子の本を読んでいて感じる安心感、といいましょうか。(←分かりにくい)

私、森の本を読んでいると透き通って冷たい湖を連想します。

この本は、白いレースのテーブルの上に置かれたワイングラスの中のミネラルウォーターです。グラスの表面には中の冷たい水と気温の差で水滴がついている、みたいな。ますます訳分からん(笑)

森のごとくのスケールの大きさを感じませんが、そこには確かに相手に対する心遣い、愛が存在します。

私はフランス文庫の蹂躙する感じも好きなのですが、ああいう自分の欲望が一番にくるのとは違います。

独りよがりの愛ではなく、相手に対する関心も同時に持ち合わせていて、読んでいて胸がほんわかする。

フランス文庫が地にまみれた凄みを感じさせるのなら、ティアラ文庫はあくまで透き通った美しさ。

ただ、私はフランス文庫はさくさく読めますが、ティアラ文庫に対する目は厳しいです。肉はいつでも食べられるが、甘いものは苦手。肉の調理は大雑把でもよいが、甘いものはより調理に工夫がないと、よっぽど雰囲気を作りこんでないと読む気になれない。

その点著者は、主人公の造詣が「うちなるサクラ」みたいで面白く、感情移入しやすさでカバー。

また、場面転換で必ず次にどうなるのかの興味を持たせるつくりになっていて、お話としてよくできていると思います。

この作者がまたティアラ文庫で書くのならチェックします。

抜けないエロのよさを思い知らせてくれました。

384,403km あなたを月にさらったら 向坂氷緒 ティアラ文庫 2009