巡礼

読むと自分の人生を送る上での見通しの甘さを思い知らされる。

ごみ屋敷の住人の人生が自分にも起こるかもしれないことだと思い知るのは目からうろこで、楽しい経験です。

楽しい?他人の人生で予習して自分の人生では避ける方法を探さねば。

解決策ってあるのか?

これは大企業の人でも公務員でもなく、時代の流れに押し流された人の話。

主人公は金物屋に勤めている。そのうち需要がなくなる仕事である。

主人公達の当たり前を当たり前としない読み手は、それでも全然予定外のことが起こり、その予定外のことが当たり前に起こる現在の世相というか自分の思い込みが自覚される。

当たり前に乗るものだった人生のレールが実は全然規定路線ではなくなんとなく外れていく。

すいません、私は年が12上の人に対しもうちょっと背中を押してくれたら結婚の可能性もあったかな。なんて考えてました。(自分から押すほどでもないかと自分勝手に)

結婚すれば自動的に良い嫁さんになってくれるとなんとなく思っていたのだが、それはただの思い込みだと自分の浅はかさが恥ずかしい。

この本は両方とも小市民的に良い人にもかかわらず、夫婦生活が続かなかった。

自分の当たり前を当たり前としてしてしまい、相手に対する気遣いを見せなかった(のも原因のひとつだと思う。自分の役割を果たそうとして、でもかみ合わない。

話が通じないディスコミュニケーションは結婚するみなの覚悟以上だと思え感情移入しまくり)

自分の思い描いていた小市民的な生活でさえ、努力なくして起こるのは少ない確率だ。

努力?あれほど橋本治が夫婦2人で新しい夫婦を作っていくしかないといっていたのに分かっていなかった。

今までの当たり前の夫婦になるのは全然当たり前でないとってな感じで、読めば自分の浅はかさを思い知らされる本です。

巡礼 橋本治 新潮社 2009