砂糖菓子の弾丸は撃ち抜けない

著者は余り作家らしい鋭敏な感覚を持っていないのでないか。

「砂糖菓子でできた弾丸で子どもは世界と戦えない」というオチはいいとしても、子どもの無力さを示す根拠に殺人を持ってくるのはあまりに同情を得やすく安直だ。

子どもの無力はそこまで極端でなくても書く方法はあるだろうに。

それに私のモットーは「神よ、変えることのできるものについて、それを変えるだけの勇気をわれらに与えたまえ」(http://d.hatena.ne.jp/akizu/20081214/t)であるが、
作中ではその変えられるものと変えられないものの区別が甘かった。

主人公は冒頭、貧困から高校へ行かないというが、奨学金など本気になったら高校へ行くのに手段がないわけはない。

自分でもやることが残っているし、やる気がないだけの子に同情しにくく、入り込めなかった。

ま、ストックホルム症候群に触れて、刷り込みで手段に気がつかないと指摘(意訳)があるし、これって貧困から脱出する意思をもてないのは育ちにもよる、という説もあるし、納得するのだが。

でも作家なら、その後どうすればいいのか示唆ぐらいあっても良かったのではないか。

主人公は結局高校へ行く決心をするきっかけになる、ヒッキーの兄貴が治ったきっかけは殺人で、解決策はないってことですか。

なんだか、そこまで考えて書かれてない、ノリで書いた気がしますが。←劇的すぎで安直、でも誰だって駄作なしに佳作は書けない

といっても、ウサギ事件が何故書かれたのか説明できない私では説得力なしです。

砂糖菓子の弾丸は撃ち抜けない 桜庭一樹 富士見ミステリー文庫 平成16年