陋巷に在り1

何かに似ている。…銀英伝

群像劇でキャラが立っていたら、全部銀英伝になってしまう。厨房のときに読んだときの影響は大きかったぜ。

それはともかく、主人公顔回は早逝することが決まっているし、謀略のただなかにある主人公がいかに頑張ろうとバットエンド。

まだ物語は始まったばかりでテーマがはっきり見えないんだけど、先行きの暗さを暗示させず、天道是か非か、にはなりそうにない。

語り口の洒脱さの底にある、ただありのままに世界を捉える静かな視点が銀英伝を思い出させる。

正義は我にあると思っても、なんともならない世の中があって、でも恨みつらみはない。

主人公の最期は傍から見て不幸だけど、本人的には幸せな救いのあるオチにするのか。

しかし、淡々と最期を処理しそうで、そうなると、小説の横断テーマのインパクトが弱くなる。

弱くしない積み重ねを最終13巻まで書ききれるか、それとも別のオチをもってくるのか、なんにせよ1巻を読む限りでは作者に哲学はある。

それを適切に提出できる力量もありそうで、読み進めるのが楽しみです。

ちなみに伝奇アクションで、顔回は目に見えない技を使えるんだぜい。

2巻からは色仕掛けをしかける敵が出てくるらしくて、小難しいことを考えさせずにテーマを提出、楽しませる仕掛けが満載です。

陋巷に在り1 酒見賢一 新潮社 1992