惑星のさみだれ

宮崎の凶行というのは、一言で言ってしまえば、「かわいいから首を絞めた」だけど、これは「文章」になっていて、でもその中になんにもない。

「可愛い」と「首を絞める」の間にはもっといろんなものがつまっているはずなんだけど、でもそれが全部落っこちている。

「短絡」って、こういうもんですよね。

自分自身の短絡を平気で野放しにして、その中身をなんにも考えようとはしない。      ‘89 橋本治

惑星のさみだれ」では、姫は愛しているから地球をその手で壊したいんだと。それを読んで思い出したのが、冒頭の文章。

姫はまだ高校生(か中学生)でまだ幼いから、可愛いんだけどね。

論理が分からないっていうイッちゃってる部分は、「地球を壊したい」以上描写されてないから、親の教育が悪かったんだろうなと思っていたら、親と上手くいっていない話が出てきて吹いた。

惑星のさみだれ」は、人の死についてもそれなりに重い。敵に殺された仲間をどう思ったのか、主人公はそれなりにショックを受けているが、姫の心の描写がない気がする。

姫が人の命の重みをどれほどに感じているかは、テーマの深化に必須だが、いまのとこるスルー気味。親との確執を見ると、まだ子どもで、何も考えていないように見えるのが欠点。

「私の手で殺したかった」と発言する日が来ないかな。

間接的にも自分の手で殺すはずだった人への執着が、他の人に殺されてどう昇華されたのか描かれたほうが面白い。

でも、姫の性格は、一般人の共感を得るように作られているからな。

こういう妄想を一緒になって実行しようとする人がいるから話がややこしくなる部分もあり、妄想を実行できると錯覚できる力がある人って大変だよなと思ったり。

また、論理の飛躍からセカイ系のにおいがして、涼宮ハルヒ第一作的オチを連想するが、姫は恋愛できるほど大人じゃないと言うかそっち系はなさそう。

地に足をつけるオチとして、最後ねーちゃん(大切な人)に、ひっぱたかれるとよいと思うが、納得できる落としどころを提出できるのか要チェック。

テーマ的には物足りないが、この話は主人公がパワーアップを果たせなくて、読者の意表をつき、物語を読ませようとする力がある。

黒猫の騎士がなかなかない造形をしていて、一読の価値あり。

本は貸本で借りて、いま手元にないので、いい加減な感想です。それでも書きたい誘惑がある考えられたエピソードが多く、一つ一つのエピソードが収束していきそうな予感でワクワクします。

惑星のさみだれ 水上悟 少年画報社