ヴァラキアの少年 グイン・サーガ外伝⑥
こぶしで横殴りに目をこすってつぶやいた。
「どうして―あいつらは、姉貴といい弟といい、ああ頓狂なんだ?どうして、おいらと、こんなにちがうんだよ―どうして……」
最初短編で仕上がる予定だった話なので、少し間延びしている。
前半・中盤ともうちょっと凝縮できたのだろうが、
それは、かれが、自らの若さと才覚、人の心をとらえる魅力、運の強さや天佑を頼みにしていればいるだけ、強く、どうしようもなくかれをとらえたのであった。
という文章の、魅力や運の強さの示し、説得力を増す為に必要だったかな。
私は、日本の中産階級に生まれて、その豊かさを当たり前にしているので、主人公の住む生き馬の目を抜く世界のほうが珍しい。
そこで、前半で珍しい世界を少し長めに案内し、珍しさが日常である眼差しを身につけさせ、豊かな暮らしがいかにありがたいものか反転させる手腕は見事。
著者は1953年生まれだから、幼いときたぶんTVがない生活を送っていただろう。
持つもの、持たざるものの差が実感できる世界を生きたことがあると思う。
そういう人が考え付く上昇志向の世界観は、若いものからみれば、べつにどうでもいいじゃん、であるが、この本の示す持たざるものの鬱積は理解できた。
海燕さんのお勧めどおり(http://d.hatena.ne.jp/kaien/20090314/p3)に読み進める予定。