いま私たちが考えるべきこと

「私たち」と「私」の関係から始まるこの本は、自分と他人との関係をどのように考えているかを問う本であり、主題的にはとっつきやすい本であった。

大体「オタク」の見解って、「極端な一般的見解」だものね。(省略)自分の作った「想像上の一般的見解」の上に、「……と考えるのが普通だけど、でも俺は違って―」、と「自分の意見」を乗っけてる。(省略)でも、本人は「自分はちゃんと常識を踏まえている」と思っているつもり
だから、自分の歪みが分からない。           ‘89(橋本治

上の文は、私のコンプレックスを刺激して困る。

一方、「いま私たちが〜」は他人の考えそうなことを下敷きにして考える人は、全体を実感できる人だとちょっと違う展開をする。

「自分のことを考える」とか、「自分のことを考えろ」ということになって、まず「自分のことを考える人」と、まず「他人のことを考える人」と、人にはこの二種類があると思う。

読みすすまなければ、言っていることがわからない、けれど、徐々に言いたいことが明らかになってくる橋本ワールドである。

まず「他人のことを考える人」はまず「自分のことを考える人」を嫉妬すると書いてあるがその通り。

私は「神は沈黙せず」(山本弘)の主人公が嫌いでさ〜

だから私は、あなたに信じろと強制するつもりはない。信じたくなければ信じなければいい。読みたくなければ今すぐこの本を伏せればいい。ただ、私は多くの証拠や体験を元に、自分が真実だと確信したところを書き記すだけだ。なぜなら、真実を伝えることこそ、私の使命だと信じるからだ

一人がどんな行動をとろうとも他人に影響するのに、自分の気持ちの充足を他人の利益の増減より重視する文章を読むといらつくのである。ホントただの嫉妬です。

この場合は自分の思うところに間違いはないと確信している人に嫉妬しているだけかな、とも思うが。

「宗教なんかこわくない!」(橋本治)の

世間の人間も、その考えを選択したほうがリーズナブルだと思うから、その考えを選択する。

自分の考えが世間に広まると、自分が生きやすくなるから、

そしてまた、思想とは、「他人に働きかけることによって、自分を利する利己的なもの」なのである。

という文章は、自分の利益と他人の利益が釣り合うようにいかに行動するかという条件を満たし、好きなんだが。

いま私たちが考えるべきこと 橋本治 新潮社 平成19年