木に学べ 法隆寺・薬師寺の美

揃えてしまうということは、きれいかもしれませんが、無理を強いるということですな。木には強いのも弱いのもあります。それをみんな同じように考えている。昔の人は木の強いやつ、弱いやつをちゃんと考えて、それによって形を変え、使う場所を考えていたんです。

行間からあふれ出る頑固ジジイだましい。ただの大工道具やお寺の様式の口述筆記なのに、やたらぎっちり中身が詰まっている。

こんな年寄りになりたいものです。実は見えていないだけで、近所にこんな年寄りがうようよいたりするんだろうか。

中身だが、一本一本の木に癖があり、それを組み合わせて、いかに建物をまっすぐ作るかの方法がかかれ、興味深い。

また、既にいろいろなものを作る技術が失われていることが指摘されている。

最後に、宮大工に伝わる口伝を載せてあり、それを書き記すまでの心の変遷を思うと侘しくなる。

ひとつの文化の終わりを知ることがどんなものか、ちょっとその重みが分かった。

木に学ぶ 法隆寺薬師寺の美 
西岡常一 薬師寺宮大工棟梁   小学館  1988