王妃の離婚

「それでも悪いところばかりではありませんのよ」とジャンヌ王妃は続けていた。(省略)
男たちがルイ十二世を許せないのは、なのに女に許されるというその一点に覚える嫉妬であることをフランソワは認めたいとは思わなかった。

時の権力に逆らって、追放された大学の秀才が30年後に頑張る話。最後、主人公は自分のおかれていた立場を肯定するが、読んでてアイタタタな気分になる。

なぜなら、私は今でも放送大学大学院でいいから勉強したい似非インテリだから。

大学で徹夜で実験をし続けて、私は真理一本で、やってられないとは思った。しかし、体系だった知識というやつに尊敬をおぼえるし、今でもその端っこでいいから身につけたいのである。

この主人公、知に対する畏敬の念がないのは少し気になり、この切ない思いは、誰も汲み取ってくれない妄想なんだなと突きつけられますた。どんなに軽蔑されようとも隠れて本を読むのはやめませんが。

挫折者が鼻を明かす話ではあるが、読者にそんな能力ないし、ちょっとカタルシスを得にくい。それでも、王妃のキャラが気持ちよく、全部読むだけの吸引力がありました。

王妃の離婚 佐藤賢一 集英社 1999