猫鬼 カナリア・ファイル

夏水の告白を聞いた時、有王は深い喜びを噛み締めた。わが子を七年間も放置した無責任な父親にはなりたくなかったのだ。

主人公に隠し子発覚?の短編のほうでは、おおっ、死にそうな人にも瑕疵があって、そこんとこ実は…がなくてちょっと新鮮です。

でも、第三者が悪と断じることはなく、そこがこのシリーズの持ち味だな。

表題作の「猫鬼」は、最初の作品「金蚕蠱」とどちらを応募しようかと迷ったそうで、最初関係なかった出来事が一つに収束していく様は「金蚕蠱」を彷彿させる。

どんでん返しが続き、わけがわからなくなりそうな話をサクサク読めるようにきれいにまとめています。

私は両方の事件で緊張感を持たせている「金蚕蠱」のほうが好きだけど、猫鬼も主人公の人脈の広がりが自然に見せられ、酔わずに一つの世界を作りまれています。主人公にも歴史があり、いま読まされているのは人生の一こまにすぎない感じが快い。

また、猫鬼の挿絵はいい感じにえぐいです。

→金蚕蠱(http://d.hatena.ne.jp/akizu/20090913/1252847002
→傀儡師(http://d.hatena.ne.jp/akizu/20091210/1260450663

猫鬼 毛利志生子 コバルト文庫 2006