夏彦・七平の十八番づくし

夏彦 千年前の人になるなんてわけありませんよ。身はたちまちにしてなるんです。

だって、二、三年前なくなった平櫛田中さんは百七歳だったそうです。

百七つだとすれば、千年は平櫛さん十人分ですよ(笑)

古人が一弾指といったら時間ですよ。一弾指は二十瞬だそうです。二十回瞬きするだけの時間です。

だから僕は二千年は一弾指だと思っています。

夏彦さん乗っています。いつも夏彦節で言われていることが、よい対談者を得て、ちょっといつもとは違う言い方をされています。

繰り返し言われていることなのに、(夏彦さんは繰り返し同じことを言っていますが、読者は言われた端から忘れるので良いのです)、ちょっと切り口が違うと、なんか新しいことをいわれた気がします。

読みが足りないと反省することしばしば。

この対談では、意地悪で裏を読まねばいけない気にさせられる夏彦節がマイルドになっていて、分かりやすくなっています。

一方で、夏彦も七平も彼岸から浮世を眺めているような風情は健在で、夏彦初心者にお勧めです。

夏彦・七平の十八番づくし 山本夏彦 山本七平 中公文庫 1990