耽美なわしら1

綾子は人間関係におけるちょっとしたミスで、その助っ人を失っていたのだ。

と言っても、べつに悪いことをしたわけではない。酔った勢いで、自分が同性愛者であることを告白してしまっただけである。

いきなり襲いかかったならまだしも、カミングアウトしただけで、相手が怖がって近づかなくなってしまったのだ。(中略)

「奴ら、相手が同性愛者と知ったとたん、襲われるって思い込むらしいのよっ。失礼な話だわ!」

女性のおしゃべりはただ言いたいだけで、それにアドバイスすると、はなじろまれる、と聞きます。

私は沈黙が怖いので女性のおしゃべりを歓迎しますが、あれ、自分がやれといわれると困ります。

何かの変化をもたらさす期待をしない言動というやつを、やれといわれても、何をしていいのかわからない。

煎じ詰めれば、趣味なんて、合理主義からすれば、時間の無駄になることは承知していますが。

それはともかく、その人の言動の裏には何かこちらがリアクションを返さないといけないとしか考えられなかったら、カミングアウトって怖いですよね。あなたが好きという遠まわしな告白に聞こえる。

また、他人がどのような人に好意を寄せようと、そんな個人的なこと私には関係ない。何故そのようなカミングアウトをしたのか理解できなくて怖い。あれ、自分を受けいてくれっていいたいのかな。秘密をもてるのも大人の強さじゃない?

勿論私はカミングアウトされたことはないし、カミングアウトは好きな人が話題に上がるような個人的なことを共有しあう友達間で行われると思います(想像)。

ところで、私が森奈津子の別の小説で好きな同性がいるのに告白できなかった。今では後悔している系の話を読んでそっちのほうが痛かったです。

好きな人がいなくて、そのような煩悶にあうことは免れているものの、私に好きな同性に告白する勇気などない。

別にそういう後悔は異性相手でも同じでしょうが、告白して、この人ならと、避けられることない人に見られる行動の積み重ねを常日頃からしていきたいものです。

明日の予告:不特定多数にカミングアウトするのに動機が理解できる場合があって?

耽美わしら1 森奈津子 ハヤカワ文庫 2009